Cさんは、私の両親の友人です。

両親と同年代で、何年も前からの知り合い。ときどき一緒に食事をしたりして、仲良くしています。

そのCさんは、何年か前から物忘れがひどくなり、認知症と診断されました。

Cさんを見ていると、認知症って、私が思っていたのとは少し違うんだな、と思うことがあります。

認知症だけれど、要介護認定は受けていない

デイサービスで体操をする高齢者

うちの親とCさんは、同じデイサービスに通っています。

親が通っているのは予防クラスで、要介護や要支援ではない人たちが通うクラスです。Cさんは認知症ですが、要介護認定は受けていません。それで、このクラスに入っています。

申請をすれば認定は受けられると思うのですが、今のクラスで楽しそうにしているし、その環境を変えたくない、という家族の希望があるそうです。

物忘れはひどいけれど、周りが少しサポートしてあげれば、自分のことは自分でできる。普通に過ごせている。だから今は受けずにいるのだと聞きました。

忘れてしまうことと、忘れないこと

そろばんで計算する手元

Cさんは、直近のことは忘れてしまいます。

でも、昔のことはよく覚えているそうです。

計算は誰よりも早い。地名もよく覚えていて、地理的なことを聞くとスラスラ答える。

認知症になっても、何もかも忘れてしまうわけではないんですね。

玄関にカメラをつけた

玄関のインターホンのモニター

ただ、直近のことを忘れてしまうので、困ることもあります。

回覧板やお裾分けで近所の人が訪ねてきて、玄関で世間話をする。それなのに、玄関からリビングに移動する間に、そのことを忘れてしまうのだそうです。

だから、誰が訪ねてきて、何をくれたのか、家族にもわからないことがたびたびある。

そこで、玄関にカメラを設置して、お客さんが来ると録画するようにしたそうです。

玄関にあった、柿のかご

かごいっぱいの柿

あるとき、うちの母が親戚から柿をたくさんもらいました。

「欲しい人にあげるよ」と話したところ、Cさんが「干し柿を作るから欲しい」と言ったそうです。

母は、たぶん忘れてしまうだろうと思って、「家族に聞いてからのほうがいいんじゃない?」と言ってみました。でもCさんは「大丈夫」と言って聞かない。

それで、たくさん入ったかごを、Cさんと母の二人で、Cさんの家の玄関に運んでおいたそうです。

案の定、そのことを忘れてしまったCさん。

あとになって「うちの玄関に柿がある!」と驚いたのだとか。

ご家族から「たぶん、あなたが持ってきてくれたんだと思うけれど……」と、母に電話がかかってきました(笑)

人に好かれるCさん

ベンチで飲み物を手にする二人

こんなCさんですが、とても人が良くて、お喋り好きです。

いろんな人と楽しく喋るので、人に好かれています。

だから、周りの人もサポートをしてあげるんだと思います。

「私、怒られたの?」

椅子に座って頬に手をあてる高齢の女性

そんなCさんでも、認知症のためにうまくできないことがあって、人をイライラさせてしまうこともあります。

あるとき、デイサービスで他の人に怒られていました。

周りの人が後で「あんなに怒らなくてもいいのにね」と言ったら、Cさんは「私、怒られたの?」と。

怒られたことを覚えていない。そもそも、怒られていること自体、よくわかっていない様子だったそうです。

母は、「これはこれで幸せなのかな」と言っていました。

家族がしていること

スーツケースを引いて歩く高齢の夫婦の後ろ姿

Cさんの症状が良くなることはありません。

それでも、進行を少しでも遅らせられたら、と家族は一緒に旅行に行ったりして、Cさんに刺激を与えるようにしているそうです。

また、Cさんは自分ではスマホを使うことができませんが、スマホを持たされています。

迷子になったときにGPSで探せるように。そして、見つけてもらったときに、家族と連絡が取れるように。

数年前までは、他人事でした

古いアルバムを開いて見る高齢者

数年前まで、Cさんの話を聞いても、私はどこか他人事でした。

でも最近は、父の物忘れがひどくなってきて、他人事ではないなと思うようになりました。

物忘れはしてしまっても、楽しそうに暮らしているCさんは、幸せだなと思うのです。

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