うちの母は、52歳のときから、ずいぶんと生き方が変わりました。

きっかけは、父が55歳で自営業の仕事を辞めたこと。母は父の仕事を手伝っていたので、父が仕事を辞めたと同時に、母も仕事がなくなりました。

そこから、母は「いろんなこと」を始めていきます。今にして思うと、こちらの方が”本来の母”だったのかもしれない、と感じている話です。

父が55歳で仕事を辞めた、母も同時に仕事がなくなった

リタイアのイメージ

父は、55歳のときに自営業を辞めました。もともと販売業をしていて、10年ほどは店を年中無休で営業し、父と母で交代しながら休みを取っていた時期もありました。

母は父の仕事を手伝う立場だったので、父が仕事を辞めた瞬間に、母の仕事もなくなったわけです。

そのとき、母は52歳でした。

最初の半年、二人でのんびり過ごしていた

のんびり過ごす室内

辞めてから最初の半年くらいは、父も母も、家でのんびり過ごしていました。

長く休みが少ない仕事だったので、時間ができたのが最初はうれしかったんだと思います。

でも、そのうち、二人とも同じことを言い始めます。「退屈だ」「太ってきた」。

そこで、母は動き始めました。

母は、掃除のパートを始めた

掃除の作業

母が最初に始めたのは、地元のリゾートマンションの清掃のパートでした。週3回くらい。

「暇を潰せて、体を動かせて、自分の自由になるお金が入ってくる」

そう言って始めたパートですが、働き始めてから、母は生き生きしていったように思います。

このパートは、10年以上続きました。一時期はホテルの布団敷きのパートにも出ていました。

自営業時代には行けなかった旅行に、行くようになった

パスポートと旅の道具

パートで貯めたお金で、母は旅行に行くようになりました。

自営業だった頃は、そもそも長い休みが取れなかった。だから旅行にもほとんど行けていませんでした。私が子どもの頃も、家族旅行に行った記憶がほとんどありません。

それが、パートを始めてお金と時間の使い方が変わってから、父と旅行に行く、母の友達と行く、というのが自然にできるようになりました。

万里の長城、ネパール、クルーズ ── 母の海外旅行

万里の長城

この時期、母は海外旅行にもよく行っています。

  • ウォーキング仲間と、万里の長城を歩きに行った
  • ネパール、ベトナム、タイ
  • 海外のクルーズ旅行にも参加

国内旅行もあちこちに出かけていて、パートの休みを利用して、次々と足を延ばしていました。

実家にいた頃の母を知っているだけに、「うちのお母さんって、こんな人だったのか」と、正直、意外に感じました。

ウォーキングの会と市民講座で、友達も増えた

ウォーキングを楽しむ人たち

旅行だけではなく、母は近所でもいろんな会に参加するようになりました。

最初に始めたのは、ウォーキングの会。

そこで新しく友達ができて、その友達とまた別の会に出かけたり、旅行に行ったりするようになりました。市民講座など、興味のあるものにいろいろ顔を出しています。

もともと母は地元で生まれ育っていて、昔からの友人が同じ市内に何人もいる。この人間関係の土台があったのも、いろんな会に自然と入っていけた理由かなと思います。

68歳、母は病気でパートを辞めた

入院手続書類

10年以上続けたパートは、母が68歳のときに区切りとなりました。

病気が見つかって、手術をすることになったからです。

そのタイミングでパートは辞めましたが、旅行や趣味の会には引き続き参加していて、暮らしのリズムは大きく変わらなかったように思います。

今も、日々忙しく過ごしている

予定がびっしりのカレンダー

今も、母は忙しくしています。

  • デイサービスに通う
  • 体操教室に行く
  • 友達とお茶をする
  • 父と大人の休日倶楽部の割引チケットで、年に数回旅行に行く

大人の休日倶楽部は、JR東日本の会員制割引でシニア向けのお得なチケットが出るもの。両親はそれを使って、年に何度か旅行に出かけています。

私も時々「今週は◯◯に行くの」と聞くのですが、母の予定の方が、私よりも多いくらいです。

父は「好奇心が旺盛なんだよな」と言うだけ

母がいろんなところに出かけたり、パートに行ったり、旅行に行ったりすることについて、父は特に何も言いません。

ただ、いろんなところに出かける母を見て、「好奇心が旺盛なんだよな」と言っていました。

「年寄りは忙しい」── 祖母の言葉が、今わかる

母は今、こんなことを言います。

「うちの母(私にとっての祖母)が『年寄りは忙しい』と言っていて、そのときは”何言ってるんだ”と思ったけど、本当にそうだった」

たしかに、母の予定の多さは、私よりも多い。

実家にいた頃の私が知らなかった、”本来の母”

空に両手を広げる女性

私が実家で暮らしていた頃、母は基本的に、店で働くか、家にいるかでした。

同窓会や、弟のボーイスカウトのママ友会に出かけるくらいで、そんなに頻繁に外出する人ではなかった。

だから、父が仕事を辞めてから、母がどんどん活動的になっていく姿を見て、「うちのお母さん、こんな人だったのか」と、正直、意外に感じました。

でも、時間が経つにつれて、思うようになりました。

こちらの方が、本来の母だったのかもしれない。

自営業を手伝っていた時代は、家と店に時間を取られて、”母がやりたいこと”の多くは、あとまわしになっていたのかもしれません。時間ができて、初めて、本来の姿が出てきた ── というふうにも見えます。

今やりたいことを、やる

旅行の準備

私の友人が、「趣味がなくて、歳をとって仕事を辞めたら何をしていいかわからなくて不安。今から何か趣味を作っておこうかな」と言っていました。

その気持ちもわかるのですが、私は、母を見ていて、そこまで身構えなくてもいい気がするのです。

歳をとったらとったで、そのとき興味があるものは、きっと一つくらいは出てくる。母だって、父が仕事を辞める前は、ウォーキングやクルーズ旅行に情熱を注ぐことになるとは、たぶん想像していなかったと思います。

だから、今は今で、やりたいことをやる。将来のために無理して趣味を作るのではなく、今やりたいと思うことをやる

私たちが定年の年齢まではまだ10年以上ある。そのときには、興味のあることも変わっているだろうし、世の中も変わっているはず。

そのときの自分が、そのときやりたいことに、自然と手を伸ばせればいいのかなと思っています。

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