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50代になると、親を見送る人が出てきます。わが家も、夫の父はすでに亡くなりました。

そうなると出てくるのが、相続の話です。

「うちはたいした財産もないから、相続なんて関係ない」——そう思っている人もいるかもしれません。私も、どこかでそう思っていました。

でも、そんなこともないのです。財産をめぐって争うようなことはなくても、何かしら問題は出てきます。周りの話を聞いていて、そう思うようになりました。

わが家の場合は、手続きと「負動産」でした

不動産の重要書類と家のミニチュア

夫の父が亡くなったあと、夫が実家を相続しました。

不動産としての価値があるわけではありません。それでも、名義を変える手続きは必要です。自分たちでやってみましたが、正直、ちょっと面倒でした(相続登記を自分でやってみた)。

そのうえ、この実家は処分に悩む「負動産」です。借地に建つ持ち家で、しかも隣と棟続き。誰も住まなくなった今も、どうするかは決まっていません(空き家になった夫の実家)。

空き家を壊すのに、700万円と言われた

解体中の住宅と重機

私の知人は、地方の実家が空き家のまま残っています。

買い手がつきそうな場所ではありません。かといって、空き家のままにしておくのは危ない。それで、取り壊しを考えて見積もりを取ったそうです。

出てきた金額が、700万円でした。

もし土地が売れたとしても、これでは足が出ます。結局、取り壊すこともできないまま、今もそのままです。

夫の友人は、田舎の山を相続した

青空の下に広がる緑の山

夫の友人は、相続した財産の中に山があったそうです。

山を相続したところで——という話です。使い道があるわけでもなく、買い手がつくわけでもない。今もそのままだと聞いています。持っている以上、固定資産税はかかっているはずです。

いらないものだけを、放棄することはできない

頭を抱えて悩む人のミニチュア

こういう話を聞くと、「じゃあ相続放棄すればいいのでは」と思いますよね。私もそう思いました。

でも、相続放棄は一部だけを選ぶことができません

相続放棄は、財産を選り分ける手続きではなく、「最初から相続人ではなかったことにする」手続きだからです。だから、いらない土地を手放すには、預貯金など他の財産もまとめて手放すことになります。

それでは現実的ではない、というご家庭も多いはずです。

調べてみたら、国に引き取ってもらう制度がありました

専門家に相続の相談をする様子

気になって調べてみたら、相続土地国庫帰属制度というものがありました。相続した土地を、国に引き取ってもらえる制度です(相続土地国庫帰属制度の概要|法務省)。

ただ、いいことばかりでもありません。

ひとつは、建物が建っている土地は申請そのものが通らないこと。つまり、さきほどの空き家の場合、この制度を使うにも、まず700万円かけて壊さなければいけません。

もうひとつは、負担金がかかること。国が10年分の管理費にあたる額を求めます(相続土地国庫帰属制度の負担金|法務省)。

そして山林は、承認される割合が低めのようです。2026年2月末の時点で、申請3,462件に対して承認は1,426件と公表されています。

※私自身が使ったわけではなく、調べた範囲の話です。相続の手続きは事情によって変わるので、実際に検討するときは専門家に相談してください。

最近は、相続の相談ができるサービスもあるようです。

相続アシスト|相続サポートサービス

亡くなって初めて、知らない兄弟がいると分かった友人

家系図と「戸籍」と書かれた木札

不動産の話ばかりしてきましたが、まったく別の問題に直面した人もいます。

友人のAさんは、お父様が亡くなって相続が発生しました。お父様は、Aさんのお母様とは再婚だったそうです。

そして亡くなったあとに、Aさんの知らない兄弟が一人いると分かったのです。

居場所は司法書士さんに調べてもらい、実際に会いに行ったのはAさん自身でした。

「相続って大変だよね〜」という会話の中で出てきた話だったので、それ以上のことは聞いていません。でも、心理的にも、手間の面でも、大変だっただろうなと思います。

ここから先は、私が調べて思ったことです。

司法書士にお願いできるのは、戸籍をたどって相続人を探すところまでのようです。相手と話をつける、いわゆる交渉を代わりにやってもらうことは、司法書士にはできないのだそうです。それができるのは弁護士。ただ、そのぶん費用は高くなります。

Aさんが自分で会いに行ったのも、そういうことだったのかなと思っています。

相続人全員の同意がないと、話が進まない

遺産分割協議書を作成する様子

なぜ、わざわざ会いに行かなければならなかったのか。

遺言書がある場合などを除いて、相続には遺産分割協議書という書類が必要になります。そして、その書類には相続人全員の同意が要ります。

一人でも欠けていたら、話が進まないのです。

知らなかった相手を探し出して、会いに行って、同意をもらう。書いてしまえば数行ですが、簡単なことではないはずです。

それに、財産が少ない家でも、相続人を探す手間は同じようにかかります。場合によっては、探すためにかかる費用のほうが、受け取る財産より高くついてしまうこともあるのかもしれません。

あの山は、いつか誰のものになるんだろう

霧のかかった山道

夫の友人には、妻子がいません。兄弟は弟が一人だけで、その弟も独身で、子どもはいないそうです。

つまり、あの山を引き継ぐ人が、この先いないということになります。

調べてみると、相続する人がいない場合は、家庭裁判所が選んだ相続財産清算人という人が手続きを進めて、最後は国のものになることになっているそうです。ただ、そこまでには1年以上かかるとのことでした。

誰も使わない山が、誰のものでもないまま何年か置かれて、それから国に渡る。

行き場のない土地は、これから増えていくのかもしれません。

揉めるだけじゃなく、処分も大変だった

「負動産」と書かれたメモと家の模型

周りの話を聞いていて、もうひとつ思ったことがあります。

相続する財産が多ければ、その財産を使って、負の財産のほうも処分することができます。お金で片づけられる部分がある。

でも、負の財産しかなければ、そうはいきません。処分するために、自分の持ち出しになってしまいます。

以前、映画『ソーゾク』を観たときに、相続は「普通の家」こそ揉める、という話を書きました(相続は「普通の家」が揉める)。

でも周りの話を聞いていると、揉めるだけじゃなく、処分も大変なんだな、と思います。

できれば、親が元気なうちに

周りの話を聞いていて思ったのは、面倒な財産は、できることなら親が元気なうちに整理しておいてもらえたら、ということです。

亡くなってからでは、選べる手が少なくなります。

そして、もうひとつ思いました。夫の父のときは手続きも面倒でしたし、負動産も抱えています。それでも、周りの話に比べたら、うちはまだマシなほうだったのだな、と。

相続の悩みは、財産が多い少ないかは、あまり関係がないようです。

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